新たに金融業界を取り上げる。初回はメガバンクについて見ていこう。メガバンクは巨大金融グループもしくは巨大銀行の意味であり、かつて日本に10行以上あった都市銀行に加え、長信銀および信託銀行が1990年代から再編を繰り返し、リーマンショック後の2011年くらいに現在の形(3大メガバンク、2準メガバンク)となった。
3大メガバンクは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(中核の銀行は三菱UFJ銀行)、三井住友フィナンシャルグループ(三井住友銀行)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ銀行)である。また準メガバンクは、三井住友トラスト・ホールディングス(三井住友信託銀行)、りそなホールディングス(りそな銀行)である。それぞれのメガバンクは傘下に、資産運用会社、証券会社、クレジットカード会社などを抱えており、一大金融グループになっている。
メガバンクを取り巻く環境は厳しさを増している。これは2016年から続く日銀の低金利政策で銀行の収益の柱である預貸金利の鞘(預金と貸付の金利差)が抜けなくなっていることに起因する。このように銀行をとりまく経営環境が悪化するなかで、銀行はさらなる変化に直面している。
みずほフィナンシャルグループの坂井辰史執行役社長は週刊東洋経済(2018年12月29日、2019年1月5日合併号)のなかで、金融機関は1)少子高齢化、2)グローバル化、3)急速な技術進歩によるデジタル化、という三つの変化に直面していると指摘し、これらの流れにどう対応し構造改革に取り組むかが求められていると述べている。
また三井住友フィナンシャルグループ社長の國部毅グループCEOも「銀行業界が非常に大きな環境変化の中にいることは紛れもない事実です。これまでの銀行の常識や文化はもはや通用しない」と指摘する(文藝春秋2018年11月号の記事、三井住友社長「将来は”情報銀行”を目指す」)。
このような銀行業界の大変革期を迎え、メガバンクに求められる人材も大きく変化しているようだ。例えば、2018年にみずほフィナンシャルグループは、新卒採用に当たって「みずほらしくない人に会いたい」とのスローガンを掲げた。
これはみずほFGが過去数年の自社内定者の個性を全業界の平均値と比較分析した結果、協調性や問題解決能力が高い半面、新しい発想や変化を生み出す想像力や変革力が低かったことが背景にある。逆に言えば、今後は新しい発想や変化を生み出す想像力に富んだ人材や変革力が強い人材が必要ということである。このような人材採用に対する考え方はみずほFGに限らず、他のメガバンクも同じで、いずれも新しいタイプの銀行員を採用したいと考えているのだ。
このようにメガバンクの採用スタンスが大きく変化するなかで、従来は内定をいち早く獲得していたような真面目なエリートタイプの学生は苦戦するかもしれない。一方でこれまで書類選考で落とされていた学生でもベンチャースピリットがある学生、フィンテックに強い学生(=デジタル人材)、グローバル志向の強い学生であれば、有名大学でなくても内定をゲットできるチャンスは大きいと思う。
メガバンクの募集職種は幅広い。個人向けではプライベートバンキング、審査(住宅ローンなど)、支店業務などがある。ただ従来型の支店についてはネットバンキングの浸透などで、支店そのものが収益を生まない銀行の「不良資産」になっており、今後はすべてのメガバンクで支店の大幅な削減が進むと見られる。
法人向けでは、法人営業、M&A、引受(株式、債券)、事業承継、融資、海外などがある。さらに将来は本部業務(経営企画、営業企画、グループ戦略、人事、広報、IR、法務、コンプライアンスなど)に加え、グループの証券会社やリース会社などに出向するケースもあるだろう。
2019年4月2日付の日本経済新聞によれば、三菱UFJ銀行は2020年4月入社の新卒採用数を530人程度とし、前年に比べ45%減らす方針を固めたという。また2019年4月の採用を半減したみずほFGもさらに2割程度減らし500人台半ばとする方向にあるという。三井住友銀行も1割減の600人を計画している。メガバンク志望者には頭の痛い情報ではあるが、これからの銀行を待ち受ける変革の時代にマッチする気概のある学生にとって活躍の場は限りなく大きい。