流通・小売業界の第二弾としてドラッグストア業界を取り上げる。
我が国のドラッグストア業界の市場規模は6兆8,504億円(日本チェーンドラッグストア協会)であり、百貨店の市場規模(6兆円ほど)を上回る。ドラッグストア市場は拡大傾向が続いており、直近の3年間は5~6%の伸びを記録している。
ドラッグストアでは、医薬品や化粧品、健康食品、日用品などを中心に取り扱っているが、最近では弁当や総菜など食品を提供する店舗に加え、酒類、お菓子、加工食品などを揃える店も増えている。また調剤(医師からの処方箋で医療用の医薬品を提供する)を併設する店舗も拡大傾向にある。
ドラッグストアのビジネスモデルは低価格の食品や日用品(粗利益率10~20%)で集客し、利益率の高い医薬品や調剤、化粧品(同30~40%)で儲けるというものである。近年は上述のように食品などへの進出でスーパーやコンビニとの業界の垣根が崩れつつある。
ドラッグストア大手として、サンドラッグ、マツモトキヨシHD、ウエルシアHD、スギHD、コスモス薬品、ココカラファイン、ツルハHなどが挙げられるる。業績はここにきて人件費の上昇が利益を圧迫する形となって、四半期ベースで営業減益を余儀なくされるケースも目立つが、2018年度通期では多くの企業で営業最高益を更新する見込みである。
ここで主要各社の特色を挙げてみよう。マツモトキヨシHDは都市型店舗が多くインバウンドの外国人観光客向けに化粧品の売り上げを伸ばしている。ちなみに、同社の化粧品は売上高の4割を占め、前年比2桁の伸びが続いている。一方、ツルハHDはもともと北海道地盤だが、関東の「くすりの福太郎」や四国の「レディ薬局」などを買収して全国展開を進めている。また九州地盤なのがコスモス薬品で、現在は東に店舗を拡大させており、愛知県まで進出している。関東地区への出店もそう遠くない日に実現するだろう。なおコスモス薬品は食品が売上高の5割を超えているところに特色がある。
ウエルシアHDは持ち株会社になる前はウエルシア関東という関東中心のドラッグストアだったが、2015年2月にイオン系のCFSコーポレーションと経営統合し、業界トップに浮上した。筆者は2008年頃のアナリスト時代にウエルシア関東の決算説明会で創業者鈴木孝之氏(当時社長、故人)の話を聞いたことがある。その時に鈴木氏は、「調剤は儲かる。今後24時間調剤に一段と注力する」と強調されていた。その後病魔に倒れ、病床でイオンの岡田元也社長に後を託したという。ウエルシア関東の戦略はウエルシアHDになっても引き継がれており、同社は24時間調剤に力を入れている。
ドラッグストア業界各社は出店攻勢をかけており、2018年度の店舗数の増加率は前年度比7%増となる見込みで、同2%のコンビニエンスストアを上回る(2018年10月14日付日本経済新聞)。筆者はドラッグストア業界は足元では人件費の上昇、またそれに伴う出店ペースのスローダウン、中長期では人口減少というマイナス要因を受けることになる。このため、業界全体の成長鈍化は避けられないものの、境界ビジネス(コンビニ、百貨店)の継続的な取り込みや調剤部門の拡大などで、緩やかな成長を維持することは可能とみる。そうしたなかで、M&Aや合併など業界の再編統合は続くだろう。
ドラッグストア業界は旺盛な求人が続くと思われる。募集職種としては、調剤部門では薬剤師となるが、薬剤師の資格がなくても店舗運営スタッフとして採用される。入社すれば、一般用医薬品の約90%の販売に携わることのできる「登録販売者」の資格取得が義務付けられる。このため、在学時に「登録販売者」の資格を取っておけば、間違いなく就職に有利に働くだろう。大学によっては、「登録販売者」の資格を取得すれば資格取得奨励金が出るところもある。ドラッグストア業界の就職希望者はぜひ「登録販売者」資格取得にチャレンジして欲しい。