いわゆる「出る杭を打たない」会社を就活の軸にするのはありだと思います。どの会社でも普通にあることですが、新卒で入社した後の数年で同期、あるいは先輩社員を上回る実績を挙げる優秀な人材は必ず存在します。そういった人材には入社1~2年目であっても実績・成果に見合った報酬で報いるか、20代であっても逸早い昇進や昇格させて活躍させるのが本人のモチベーションアップにつながりますよね。
ただ、これまでは大半の日本企業で年功序列を人事制度として採用してきました。年功序列といえば、終身雇用・新卒一括採用とならぶ日本型雇用制度を代表する仕組みです。具体的には、能力や成果ではなく勤続年数(=事実上、新卒で入社しているので年齢)で、会社のなかでの役職や給料が決定されるものです。給料で同期と差がつき、また管理職ポストにつけるのも30代に入ってからというのが一般的でした。
しかし、ここにきて年功序列を見直すか、廃止する会社が増えています。三井住友銀行は2026年1月を目途に年功序列を廃止するもようです(日経新聞、2024年6月18日)。具体的には、従業員の給与を職種や年次で決めてきたものを役割に応じた給与システムに切り替えことで、年次が給与に考慮されることはなくなります。20代の社員でも実力があれば重責を任され年収2000万円に到達可能になるほか、専門人材には外資系企業と同じ職種の水準を参考にすることで5000万円前後の年収も可能になるということです。
旧い体質が残ると言われた銀行で、こうしたグローバルスタンダードな給与体系に移行していく背景には、世界で競争していくうえで外資系企業に転職することができる高スキルを持つ人材を引き留める、ないしは採用する必要に迫られたこともあると思います。
ヤマハ発動機も2025年1月から新たな人事制度を導入し、年功序列を廃止します(日経新聞、2024年9月26日)。報道によれば、同社の管理職昇格は従来早くて30代半ば、平均42歳前後だったのが、大卒入社後20代でも可能になるということです。
このような能力給・成果給を人事制度に取り入れる会社は、別の表現でいえば、社員に対し「出る杭は打たないよ」との意思表明と捉えることもできるでしょう。
私が最近訪問した会社に株式会社ギフトホールディングス(東証プライム上場、本社は渋谷サクラステージSHIBUYAタワー36階)があります。同社は、横浜家系ラーメンの「町田商店」、ガッツリ系ラーメンの「豚山」、油そばの「元祖油堂」などで知られる外食の成長企業でニューヨークなど海外展開にも力を入れています。みなさんも一度は「町田商店」でラーメンを食べたことがあるかもしれません。
同社の採用担当責任者の方と人事制度についてお伺いしたところ「出る杭は打たないどころか、出る杭は伸ばす」と述べられました。実際、同社では入社2~3年目で海外を含む店長のポジションに就く社員がHPで紹介されています。私はギフト社成長の原動力の一つはここにあるなと確信しました。
若手社員でも成果や能力をきちんと評価して、報酬やポストで報いる会社、すなわち年功序列と決別する会社は(一部業種には例外もあるとは思いますが)企業価値を高めているのは間違いありません。よって、本ブログの冒頭のところに戻りますが、「出る杭を打たない」あるいは「出る杭を伸ばす」会社を就活の軸にするのもいいのではないかと思います。