OpenAIの公共政策・パートナーシップ担当、大久保和也氏 特別講義レポート

2025.12.22

 

こんにちは、デジタルビジネス・マネジメント学科(DBM学科)の学科長、金谷武明です。   先日、私のGoogle時代の同僚でもあり、現在はChatGPTなどを開発するOpenAIで公共政策・渉外活動を担当されている大久保氏をお招きし、特別講義を行いました。生成AIの最前線で活躍する立場から、AI技術の現在地や、これからの時代を生きる学生に必要なマインドセットについて、熱いお話を伺いました。今回はその様子を少しご紹介したいと思います。

 

1. OpenAIのミッションと生成AIの衝撃

講義の冒頭で最初に触れたのは、まずOpenAIという組織が何を目指しているのかについて。大久保氏は、OpenAIがもともと特定の企業によるAIの独占を防ぐために設立された経緯やミッションについてお話しされました。そのミッションとは、『汎用人工知能(AGI)が全人類に利益をもたらすようにすること』。特定の国や企業のためではなく、人類全体のためにAIを作るという壮大な目標です。また、テキストからリアルな動画を生成する「Sora」などの最新技術を紹介しつつ、現在のAIの進化は「火の発見、電気、インターネットに匹敵、あるいはそれ以上の社会的インパクトがある」と強調されました。

 

2. 学生のうちに身につけるべき「AIスキル」とは

学生にとって最も関心がある「AI時代に何をすべきか」という点についても質問してみました。

 

学生「今後AIを使いこなすために、学生のうちにどんなスキルを身につけるべきですか?」
大久保さん「『習うより慣れろ』です。毎日触ることが何より重要です」  

 

大久保氏は、検索エンジンの代わりにAIに聞いてみる、趣味のアニメについて壁打ちしてみるなど、日常の些細なタスクで「使い倒す」ことの重要性を説きました。   AIは時に「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」をつくことがあります。毎日使うことで、「この分野は得意だが、ここは間違えやすい」というAIの特性を肌感覚で掴むことこそが、今の学生にとって最大の強みになるとアドバイスを頂きました。  

 

 

3. 「仕事が奪われる」という不安に対して

急速な進化を目の当たりにして、多くの学生が抱く「AIに仕事を奪われるのではないか」という不安についても、明確な回答を頂きました。  

 

学生「AIに仕事が奪われるのではないかという不安があります」
大久保さん「AIが仕事を奪うのではなく、『AIを使える人』が『使えない人』の仕事を代替していくことになるでしょう」  

 

大久保氏は、AIはあくまで「副操縦士」であると説明しました。 AIに任せられる作業は任せ、人間は最終的な「決断(意思決定)」と「責任を取ること」に注力すべきです。電卓の登場で計算能力よりも高度な数学的思考が重視されたように、AI時代には人間らしい判断力こそが求められるというお話は、学生の不安を前向きなモチベーションへと変えてくれました。  

 

4. 変化の時代を乗り越える「レジリエンス(回復力)」

講義の後半では、大久保氏自身のキャリアや挫折経験についても伺いました。特に印象的だったのは、イスラエルでの強烈な体験談です。  

  

大久保さん「ミサイル警報やテロが発生する中、言葉もわからず、『死ぬかもしれない』と思った経験があります。それに比べれば、仕事の失敗なんて『死ななきゃ安い』ものです」

 

変化の激しいこの時代、OpenAIの社員ですら半年後の未来は予測できないそうです。だからこそ、わからないことを不安に思うのではなく、「誰も正解を知らないなら楽しんだもん勝ち」というポジティブなマインドセットと、失敗しても立ち直る「レジリエンス(柔軟性・回復力)」が重要だというメッセージは、これから社会に出る学生たちの背中を強く押してくれました。  

 

 

学生の感想

  • OpenAIが今後生成AI以外に参入するとしたらどのようなビジネスに参入していくのかが気になった。
  • 今日のお話を聞きながら、AI が自分の身近なところまで来ていることを改めて実感しました。普段から、DBMの授業では調べ物やまとめ作業にGPTを使っていますし、空いた時間には Suno で曲を作ったり、Sora や Flux で好きな動画を作ったりしています。今日初めて、GPT が世界で最も早く普及した技術であることや、海外の大学では授業や事務にも本格的に導入されていることを知り、とても驚きました。その分、世界が若い世代の学びをAIで支えていこうとしている動きは、自分ごととして強く感じられました。これからもAIを上手く活用しながら、学びと創作の幅を広げていきたいです。大久保和也さん、貴重なお話を本当にありがとうございました。
  • 本日、大久保先生の講演を拝聴し、大変多くの学びを得ることができました。デジタル分野が扱う領域についての理解が深まっただけでなく、現在自分たちの専攻で何を重点的に学ぶべきかも、より明確になりました。また、将来の就職に向けた方向性についても示唆をいただきました。これからの社会にはテクノロジーが不可欠であり、その技術をどのように生活の中の課題解決に活かしていくかが重要であると強く感じました。本日の講演は、今後の学習にも大いに役立つ内容だったと思います。
  • 技術は人のために使うと思った。プログラミング勉強中なので、「誰に役立つか」を考えて学ぶ。失敗を怖がらない。
  • 毎日のように使っているChatGPTを手掛けている方の話を聞けて貴重な時間だった。何かあれば、困ったらChatGPTに聞く生活をしているので離れられない。寄り添いすぎないように工夫していたり、優しい言葉をかけるだけじゃないように工夫していたり、トラブルが起きないように引くこともできるようにしているのがすごいと思った。
  • ChatGPTはよく使うアプリで、すごく頼ってるのでお話が聞けてとても良かったです。英語を頑張って就職したいなーなんて思いました。
  • 講義では、生成AIの仕組みと社会での役割について具体的に理解することができ、とても印象に残りました。特に、生成AIが書籍、ニュース、論文、コードなど膨大なデータを学習し、文章や画像など様々な情報を生み出せる点は改めて驚きを感じました。また、OpenAIが安全性と倫理面を重視し、学習データのチェックを徹底していることを新しく知り、AIを正しく使う大切さを実感しました。大久保和也さんが日本における安全で信頼性の高いAI活用を推進しているというお話も大変刺激になりました。私もAIを活用しながら、広い視点で学び続けたいと思います。

 

スタートアップ気質を持つOpenAIならではのスピード感や、大久保氏のバイタリティ溢れるお話に、学生たちも大いに刺激を受けたようです。   
今後もこうした機会を通じて、学生たちの視野を広げ、彼ら彼女らの未来を切り拓くサポートをしていく所存です。

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金谷武明(デジタルビジネス・マネジメント学科 学科長)