業界を知る(26)半導体製造装置業界

2021.04.29

今回は、半導体製造装置業界を取り上げる。

 

ここにきて連日のように新聞やテレビで世界的な半導体供給のひっ迫や不足が報じられている。3月以降4月上旬までに日本経済新聞の半導体を取り上げた主要記事の見出しを紹介しよう。

 

3月10日(水) 半導体 EUも脱海外依存(1面トップ)

3月10日(水) 次世代半導体 日本後手に(経済 5面)

3月11日(木) アップル、独で半導体開発(企業 13面)

3月12日(金) 半導体株 微細化で選別(投資情報19面)

3月23日(火) 車載用半導体の復旧を早く(社説)

3月25日(木) 米半導体、復権へ始動(総合 3面)

3月29日(月) 半導体を巡るゲームチェンジ(オピニオン 7面)

4月2日(金)  TSMCが実質値上げ(アジアbiz 13面)

4月3日(土)   日米、半導体供給で協力

4月3日(土)   日本勢、素材・装置強み

 

上に挙げた以外でも多くの記事が多く掲載され、また4月中旬以降もほぼ連日のように半導体関連の記事が紙面を賑わせている。

 

これらの記事を簡単にまとめると、(1)半導体は「20世紀の石油」と言われるほど主要産業にとって不可欠のものになっている、(2)先進各国は経済安全保障の観点から半導体(主要な生産地域は中国や台湾)の自国生産・海外依存の脱却を図る動きが強まっている、(3)車載向け半導体大手ルネサスエレクトロニクスの工場火災の影響で自動車メーカー各社が減産を余儀なくされ自動車の電子化が進んでいることが明らかになった、などであろう。

 

半導体については、その歴史や変遷、微細化技術の進化、日本メーカーの凋落、ファウンドリー(半導体受託製造)の台頭など読者の皆さんにこの30年間の半導体の動向について語りたいことはたくさんある。しかしながら就活生向けブログという視点で書いているので、半導体の説明については別の機会に譲りたい。

 

本稿でこれから何回かに分けて本ブログで取り上げるのは、その半導体の製造に使われる機械、いわゆる半導体製造装置である。半導体製造装置は我が国のメーカーが強みを持っており、世界シェアの高い企業も多くある。言い換えれば、半導体不足が問題となっているなかで、日本の半導体製造装置メーカーの存在がなければ、半導体メーカーも半導体を供給あるいは増産をすることができないのである。

 

半導体はおよそ400~600の工程を経て製造されるが、大きく前工程(トランジスタ工程と配線工程)と後工程(組み立て、パッケージング、検査)に分けられる。前工程は高純度のシリコンからウエハー(半導体の基盤となる薄い板)上に完成した回路を作るまで、後工程はウエハー上の回路を検査してチップごとに切り分ける。その後にチップを樹脂で包み、機能をテストするものでる。

 

ここでは簡単に述べたが、半導体は微細化が極限(ナノメートルの世界=1ナノメートルは人間の髪の毛の太さの10万分の1)まで進んでおり、それを作る製造装置もきわめて精密かつ高度な技術が必要だ。となれば、半導体製造装置の分野で日本メーカーが強い(世界の市場シェアは35%超とみられる)のもうなずけよう。

 

2021年4月14日、半導体業界の国際団体SEMIは、2020年の半導体製造装置の世界販売高は前年比19%増の約712億ドル(約7兆7千億円)になったと発表した。前述した世界的な半導体不足を受けた半導体メーカーおよびファウンドリー(=SMIC[中]、インテル[米]、サムスン電子[韓]、TSMC[台]、UMC[台])などの増産投資が強含みで推移したことが挙げられる。半導体はこの先も自動車やIOTの進展などで一段と需要の高まりが見込まれるため、つれて半導体製造装置メーカーの業績も好調に推移するだろう。

 

それでは、それぞれの工程で我が国が誇る半導体製造装置メーカーを紹介しよう。まず前工程では紫外線(UV)に反応する薬液(フォトレジスト、感光剤)を塗布・現像するレジスト塗布という工程がある。レジスト塗布・現像を行うのがコータ/デベロッパといわれる装置で、この装置では東京エレクトロン(8035)が世界シェアの9割程度を握っている。ほぼ独占と言っていいだろう。

 

半導体は微細化技術の進歩が目ざましい。この点から、ここにきて重要度が急速に高まっているのが、EUV(Extreme Ultra Violet、極端紫外線=波長が非常に短い紫外線のことで半導体の回路をさらに微細化する究極の露光光源とされる)露光技術である。今後半導体メーカーではEUV利用が本格化するのは間違いないだろう。

 

レーザーテック(6920)はEUV検査装置(ニッチ分野)で強みを発揮する企業だ。ここでは説明は省略させていただくが、マスクブランクス(EUVを使いシリコンウエハーに焼き付ける回路を描く原版)検査装置、マスク(ウエハーに回路を焼き付ける際の設計図)検査装置では、どちらも世界シェア100%を握っている。

 

前工程では、不要になったフォトレジストを取り除く洗浄工程がある。ここで強みを発揮しているのは、京都に本社があるSCREENホールディングス(7735、旧社名は大日本スクリーン製造)である。同社はバッチ式洗浄装置の世界シェアが70%を超えるとされる。

 

後工程でも日本の製造装置メーカーの存在感が大きい。ウエハーをチップごとに切り分けるダイシングソーでは、ディスコ(6146)が世界シェアの7~8割を握っている。また後工程のパッケージング/テスト(チップを樹脂で包み機能を試験する)では、アドバンテスト(6857)が世界シェアの過半を制している。

 

ここまで、ざっくり半導体製造装置業界をみてきたが、いかがだっただろうか。我が国の半導体製造装置メーカーは世界的な優良企業が多く存在するにも関わらず、半導体メーカーを支える企業(BtoB)でもあるので、もしかしたら目立たないかもしれない。本ブログで初めて半導体製造装置メーカーを知った方も多かったのではないだろうか。

 

次回からは半導体製造装置の主要メーカーについてビジネスのみならず採用面も含め、詳細にみていくことにしたい。