業界を知る(28)半導体製造装置(アドバンテスト)

2021.06.11

今回は、半導体製造装置業界からアドバンテストを取り上げる。

 

アドバンテストは半導体製造の「後工程」のなかでも最終工程にあたるテスタの大手である。半導体テスタは、半導体を自動で電気試験し、品質や性能、信頼性を評価する装置だ。テスタ市場ではアドバンテストが世界シェア40~50%を握り、テラダイン[米]とほぼ世界シェアを二分している。

 

やや専門的になるが、半導体テスタと言っても用途別で2つに分けられる。一つは、SoC(System on Chip=一つの半導体チップの上に様々な集積回路、システムを載せたもの、非メモリとも言う)テスタ、もう一つは、メモリ(DRAMなどの記憶装置)テスタである。

 

近年、SoCはスマートフォンの高機能化でCMOSイメージセンサや在宅ワークの拡大でHPC(High Performance Computing)向けが伸びている。同社がSoCテスタに強いということも相まって、同社のテスタ売上はSoCテスタが1,414億円、メモリテスタが658億円(2021年3月期)とSoCテスタの売上がメモリテスタの2倍以上となっている。

 

直近のアドバンテストの業績(2021年3月期、IFRS)は、売上高3,127億円(前期比13.4%増)、営業利益707億円(20.5%増)と好調だった。また受注高も3,306億円(14.9%増)と過去最高を記録した。SoCテスタがスマートフォンやゲーム機器、HPCなど最終製品の伸びを背景にテスタ需要が拡大したことが背景にある。今2022年3月期の会社予想は売上高3,500億円(前期比11.9%増)、営業利益850億円(20.2%増)となっており、さらに収益のモメンタムが強まる公算である。

 

中長期でみる半導体テスタ市場はどうだろう。実は、半導体テスタは半導体メーカーやファウンドリーからの受注ではなく、OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly & Test)と呼ばれる半導体後工程を受託する企業に納入する。このため、半導体メーカーやファウンドリーの設備投資増の恩恵を必ずしも直接的に受ける訳ではないが、やはり最先端のSoCやメモリ半導体の増産が活発化してくると、テスタ需要も盛り上がる。中長期では多少の波はあっても同社の最先端テスタは引き合いが活発化し、業績は拡大傾向が続くと予想する。

 

最後に余談を一つ。今ではアドバンテストの本社は新丸の内ビルディングにあるが、私が同社を担当していた頃は新宿NSビルにあった。IR担当部長への取材アポイントを11時に入れ、終了後に29Fのそば屋で親子丼定食を食べるのがルーティンでとても楽しみにしていた。アドバンテストの本社はとても明るくおおらかで良い雰囲気だった。社員の方々は伸び伸びと仕事をされていた記憶がある。このような社風は今でも変わらないのではなかろうか。

 

就活生のみなさんは同社の企業説明会に参加して採用チームの社員から直接話を聞いて欲しい。必ず同社に入社したくなるだろう。