今回は、半導体製造装置業界からSCREENホールディングスを取り上げる。
同社は2014年10月に持株会社となり、社名が大日本スクリーン製造からSCREENホールディングスとなった。私が同社を担当していたころ京都出張となれば、大日本スクリーン、島津製作所、村田製作所の3社をコアにして会社訪問のスケジュールを設定していた。本決算取材は初夏の京都だった。島津製作所の取材が終わるとタクシーで大日本スクリーンに移動していたことを思い出す。
同社は、もともとは印刷製版関連機器のメーカーとしてスタートしたが、その技術(表面処理技術、直接描画技術、画像処理技術)を応用して半導体製造装置、液晶製造装置、デジタル印刷機などに展開している。また新規事業ではエネルギー分野(燃料電池等)やライフサイエンス分野(細胞関連、錠剤関連)などにも進出している。
現在の同社の主力ビジネスは半導体製造装置である。とくに強みを持つのは、前工程のなかで半導体を洗う洗浄装置であり、世界シェア47%を握りトップの座にある。連結売上高(2021年3月期)の仕向地別では、中国28%、台湾23%、日本20%となっており、日本を含むアジア向けで売上高の70%を超える。とくに台湾のファウンドリー世界最大手TSMC向けの売上が多い。
業績について。2022年3月期(日本基準)の会社計画は売上高3,725億円(前期比16.3%増)、営業利益375億円(53.1%増)であり、売上・利益ともに過去最高を更新する見込みである。インテル[米]やTSMCの工場新設や増設など大型設備投資の恩恵を享受する。中長期でみれば、ファウンドリーの設備投資一服による受注減などもあり得るが、半導体の世界的な供給不足を背景にしたTSMCなどの今後の設備投資計画などを見る限り、急速に投資意欲が減少する事態は考えにくい。SCREENホールディングスの成長は続くと予想する。
最後に採用について。同社の新卒採用HPを見ると「採用メッセージ」が掲載されている。ここには同社のみならずグローバル企業を志望するみなさんに重要な意味が含まれているので、それを紹介させていただくとともに私なりの考えを述べたいと思う。同社の「採用メッセージ」には、“グローバル”な人材を求めていますとのタイトルの後に次のような文章が続いている。少し長くなるが、学生のみなさんにはぜひ読んでほしい。
・SCREENでは売上高の約80%を海外売上で占めています。海外市場でのビジネスが多いという意味では、海外志向の人が活躍できるステージがいくつも広がっていますが、「語学力を生かしたい」、「とにかく海外に行きたい」という想いを持っている人には、ぜひもう一歩踏み込んで考えていただきたいと思います。
・SCREENの「グローバル」な人材は「語学ができる」人材のみを意味するわけではありません。私たちが求めているのは、どんな状況、どんな環境に置かれても、そこで戦うことのできる人。新しいこと、知らないことにわくわくし、前向きにチャレンジしたいと思える挑戦心旺盛な人こそが、「グローバル」な人材だと考えています。語学が苦手な人でも、前向きな挑戦心があれば、その中で語学を身に付けていくことは可能です。そして語学が得意な人は、その“手段”を生かすだけでなく、“目的”のために、さらにそこから何をすべきかまで、思いを馳せていただきたいと考えています。
どうだろうか。SCREENホールディングスの求める「グローバル人材」は単に語学ができる人材ではないと強調している。とくに後半のパラグラフにある「どんな状況、どんな環境に置かれても、そこで戦うことのできる人。新しいこと、知らないことにわくわくし、前向きにチャレンジしたいと思える挑戦心旺盛な人」という点には、ロンドンやシンガポールで海外勤務を経験した私にはとてもしっくりくる。こうした人材を採用したいのはSCREENホールディングスだけではなく、他のグローバル企業でも同じだろう。海外で成功し、活躍するのは、そのような日本人だからである。現実には、英語がうまくて海外に赴任したとしても異文化に溶け込めず、やむなく帰国するという人も多くいる。
英語力は必要最低限のスキルとしてレベルを上げておかなければならないことは言うまでもない。だから、これまで本欄でも「TOEIC800以上」を目指してほしいと述べてきた。それはそれで達成してほしいのだが、英語力に加えてチャレンジスピリット、多少のことには動じない精神力、異文化理解力、さらには教養(歴史、文化など)などを身に付けることも大切なのだ。例えば、みなさんの通っている大学に海外留学生がいるのなら、積極的に話しかけてみたらよい。留学生を通して異文化を知ることは、みなさんの大きな財産になるだろう。