英語力アップが必要だ

2023.12.27

今から約1年前の2022年10月末に著書「必ず成功する就活実践法」(八千代出版)を上梓しました。この本の3割ほどは、過去に当ブログで書いたものをまとめたものですが、「これからの働き方」や「人的資本経営」、企業分析にあたって「資本コスト」「ROIC」など新たに書き下ろした部分も多くあります。

 

タイトルが、就活とあるので学生向きではあるのですが、内容は若手ビジネスマン、(業界・企業分析の箇所は)投資家にも十分耐えうる内容となっています。本ブログ読者の皆様には紀伊国屋書店新宿本店もしくはAmazonで購入できますので、ぜひご一読していただけたら幸いです。以下は出版社からの紹介文です。

 

『新型コロナ感染拡大の影響は大きく、日本社会や企業経営、雇用のあり方など劇的な変化をもたらしている。証券アナリストとして長きにわたり活動の後、大学にてキャリアサポートセンター長として就職指導をしてきた著者による、新時代のキャリア形成の指針。変化の時代に即した就職活動の準備の仕方、業界・企業分析のやり方、主な業界と企業の見通し、面接対策について詳細に説明、就活はもちろん、その後のワークキャリアのヒントが満載されている』

 

さて本書で繰り返し述べたのは、学生時代から英語力を向上させる必要性です。我が国は人口減少に歯止めがかかりません。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によれば、我が国の総人口は、2020年国勢調査による1億2,615万人が2070年には8,700万人に減少する(2020年時点の69.0%に減少)見通しです。

 

これはどういうことを意味するかというと、(インバウンドによる恩恵を受ける業界はあるにしても)国内市場、換言すれば内需がどんどんシュリンクしていくということです。そうなると、これまで国内市場を相手にビジネスをしてきた企業も海外マーケットに進出するしか生き残る道はないのです。もちろん、地方企業も例外ではありません。

 

日本酒の「獺祭(だっさい)」をご存じですか。「獺祭」は山口県岩国市に本社がある旭酒造が製造しているのですが、米ニューヨーク州に新たな酒蔵を建設し、2023年9月から現地の酒米と水を使用した純米大吟醸「DASSAI BLUE」を製造しています。現時点でも旭酒造のお酒は約30ヵ国に輸出し、海外売上高が全体の4割を占めるのですが、さらなる成長を目指して米国現地生産に踏み切ったわけです。

 

中国新聞デジタル(2023年2月24日)に旭酒造の桜井博志会長のインタビュー記事が載っていました。桜井会長は海外生産に踏み切った理由を問われて次のように答えています。

 

『日本酒を国際化するには現地生産しかない。もちろん輸出の方がコストは安い。ワインもフランスなどの産地だけでなく、日本国内でも生産している。世界の中で自社商品の位置付けを知るために進出する。10年先には売り上げの8~9割を海外で占めたい』

 

ということです。このように、大都市と地方、業界や企業規模に関係なく、企業が社員に対して高い英語力を要求するのは必然的な流れだろうと思います。「俺は英語ダメだから」などと笑っていられた時代は完全に過ぎ去ったと思ってください。英語力をブラッシュアップしておけば、これからの時代において活躍するステージが間違いなく増えます。逆に言えば、英語ができないと社内の評価は低くなり、活躍の場は限られることになるのは確実でしょう。この先、みなさんが志望企業を検討するうえで、社員のビジネス英語力アップに力を入れているところには積極的にチャレンジしてほしいと思います。

 

日本経済新聞朝刊の投資情報面に「一目均衡」というコラムがあります。2023年12月26日は欧州総局の大西康平記者が書いていました。大西さんは欧州総局へ異動される前は、証券部の記者だったはずで私は大西さんが深掘りされた記事はいつも注目して読んでいました。余談ですが、大西記者は証券分析のプロ資格である日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA®)を保有されているすごい記者さんです。

 

コラムのなかで大西さんは日立製作所の小島啓二社長の英語力について触れていました。文章を一部引用しますと、『トップの発信力への注目も高い。「通訳を介さずに英語で直接やり取りができ建設的な会話ができた」。英運用会社の株式調査責任者は11月、日立の小島社長との面談を振り返る。上場来高値圏にあったが、改めて継続保有を決めた。同時期に同社長と面会した、他の英運用会社の担当者も「物腰が柔らかながら、キレキレの英語で投資家と渡り合うレベルの高さに感動した」』と舌を巻いたとのことです。

 

どうやら日本の経営者の英語力(=英語での発信力)が企業価値向上に直結し、株価を左右する時代に入ったようです。