業界を知る 〜業界情報の収集〜

2018.11.02

自分の興味や関心のある業界を研究するには、情報収集が不可欠である。ただ就活生の皆さんは、業界の情報収集が必要と言われても戸惑われる方も多いと思う。そこで、以下では私の証券アナリスト、あるいはキャリア教育を実践するキャリアサポートセンター長としての経験を踏まえ、業界情報収集のやり方を紹介する。
 
まず業界情報といえば、就活生の皆さんになじみがあるのは大手就職支援会社が出している「業界&職種研究ガイド」(マイナビ出版)や「業界MAP」(ディスコ キャリタス就活事務局)などであろう。とくにマイナビの「業界&職種研究ガイド」は幅広く業界の基礎知識や業界構造、主な募集職種を解説しており、業界研究の入門書としてお薦めしたい。
 
就活生の皆さんは、最初に「私はどうしても金融業界」などと決めつけずに、このような入門書を読んで、世の中に多くの業界があることを知って欲しい。色々な業界を知るうちに、視野が拡大し、「この業界もおもしろそうだな」と考えが変わっていくかもしれないからである。
 
ただし業界研究は入門書だけでは物足りない。自分の一生を託すことになるかもしれない業界である。関心を持った業界はとことん深掘りして欲しい。業界の基本知識はもちろん、現況や将来の方向性などまである程度掴んでおかなければ、企業での面接等に対応するのは難しいだろう。具体的な業界深掘りのやり方として、私は以下の方法を皆さんに推奨したい。
 
【新聞・専門紙】
業界や主要企業の動きをチェックするには「日本経済新聞」(日経新聞)が最適と思われる。大学3年時から読み始めても間に合うが、日経新聞はビジネスマンを対象にしているだけに、読みこなすには慣れが必要である。このため、できれば大学2年から読み始めることを推奨する。
私はこれまで何回か日経新聞記者の取材を受けたことがある。その時に記者から聞いた話だが、同紙の企業報道部はビール業界担当だけで二人の記者がいるという。それほど各業界を手厚くフォローしていると言えよう。最初は理解に苦しむことがあっても1~2年程度にわたって日経新聞を読み続ければ、世界や日本経済の動きはもちろん、主要産業の動向や企業業績などが頭に入ってくるだろう。
 
もし、自分の就職したい業界がほぼ固まっているという場合は業界紙にチャレンジして欲しい。例えば、将来百貨店のバイヤーをやりたい、あるいはコンビニエンスストア大手に入社してスーパーバイザーになりたいというように小売・流通業界を目指している皆さんには「日経MJ」、証券・銀行など金融の世界が念頭にある場合は「日経ヴェリタス」を読んで専門知識を深めて欲しいと思う。
また業界全般では「日経産業新聞」、「日刊工業新聞」、「フジサンケイ ビジネスアイ」などがある。主要な業界紙は大学の図書館で読めることもあるので、一度チェックしてみてはいかがだろうか。
 
【雑誌】
代表的な経済誌では、「週刊ダイヤモンド」、「週刊東洋経済」、「エコノミスト」、「日経ビジネス」などが業界の動きを知る上でとても参考になる。これらの経済誌は大学の図書館で閲覧できる。必ずしも毎週これらを読む必要はないと思われるが、自分の気になる業界や企業の記事が特集された場合はできるだけ読んでおくようにしよう。
 
【書籍】
日本経済新聞の記者が執筆している「日経 業界地図」と東洋経済新報社の記者が執筆している「会社四季報 業界地図」が双璧だろう。どちらも多くの業界を網羅しているほか、今後の業界の動向にもコメントしており、就活の業界研究には参考になるだろう。また業界マップがイラストで掲載されているので、業界を構成する企業やそれぞれの位置が一目でわかる。自分の関心がある業界のみを図書館でコピーするのもよいが、一冊購入して幅広く業界研究を行うため手元に置いておくと役に立つだろう。
以下では、業界研究に関連する3冊の推奨本を挙げておく。
 
(1)「10年後の仕事図鑑」堀江貴文、落合陽一(2018)SB Creative
(2)「投資テーマ別成長業界&企業」大和証券投資情報部(2017)日本経済新聞出版社
(3)「業界分析ハンドブック」みずほ証券エクイティ調査部(2017)東洋経済新報社
 
とくに(1)の「10年後の仕事図鑑」は就活を始めようという学生の皆さんには是非とも読んで欲しい一冊である。同書を読めば、もしかすると皆さんの就職に対する考え方が変化するかもしれないことを一言付け加えておく。