業界を知る 〜流通小売業界・コンビニ業界〜

2018.11.26

本ブログの業界分析はまず流通・小売業界から始めたい。初回に取り上げるのは、コンビニエンスストア業界(以下、コンビニ業界)である。
 
我が国のコンビニ業界は1974年(昭和49年)にセブンイレブンが東京江東区の豊洲店に1号店をオープンしてから最近まで拡大を続けてきた。国内市場規模は11兆4,813億円(2017年度、前年度比2.6%増、日経MJ)である。小売業では最大の業界である。2018年の時点で、この業界はセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンでマーケットシェア9割を占める寡占状態にある。店舗数ではセブンイレブンが20260店、ファミリーマートが17232店、ローソンが13992店で、大手3社合計では51484店舗になる。
 
この3社のなかではセブンイレブンが頭一つ抜けた存在であり、店舗数もさることながら全店平均日版(店舗1日の売上高)で65.3万円とファミリーマートの52.0万円、ローソンの53.6万円に対して10万円以上の差をつけている。セブンイレブンが全店平均日版で競合2社に差をつけている点については、いくつかの理由が挙げられる。ただ本ブログでは取り上げない。セブンイレブンの強さの秘密については、「売る力」鈴木敏文(2013)文春新書 などが参考になるだろう。セブンイレブンのみならずコンビニ業界を目指す学生諸君にはぜひ読んで欲しい一冊である。
 
ただ、これまで一貫して成長を続けてきたコンビニ業界もここにきてやや陰りが見えてきた。それは2017年度の既存店売上高がセブンイレブン以外はマイナスとなり、またそのセブンイレブンでさえも客数では前年比‐0.9%とマイナスに転じたことである。大手3社で5万1484店、その他のコンビニ、例えばミニストップやセイコーマートを加えれば、我が国全体のコンビニ店舗数は5万6千店といわれる。コンビニ業界の今後はどうなるのだろうか?
 
コンビニ業界は識者の間で何度も成長限界論が議論された経緯がある。コンビニ業界はそのたびごとに顧客の潜在ニーズを取り込んで新たな市場を作り出してきた、具体的には、公共料金の収納代行(1987年)やチケット発券(1996年)、ATM(1999年)、コンビニ銀行(2001年)、いれたてコーヒー(2013年)などである。
 
こうしたコンビニ業界の過去の成功を踏まえ、この先も「高齢者向けの商品を充実させるなど、消費者のニーズの変化に対応できれば成長できる余地は十分にある」(日本経済新聞夕刊、2018年11月12日、ニッキィの大疑問 コンビニ 成長続くの?)といった将来を楽観視する見方が多々みられる。
 
しかし筆者はコンビニ業界の成長は(国内市場については)、ここ数年以内にピークを打ち、成熟期に入ると考えている。これは、1)人口が減少するなかで大量出店を続けることが難しくなってきている(店舗がすでに飽和状態にあるとみられる)、2)成長の原動力であった24時間営業のビジネスモデルの継続が人手不足が原因で先行き不透明な状況になってきている、3)FC店舗そのものが人件費の高騰で利益面で苦しい状況に直面している、などが主な理由である。
 
しかしながら、眼を海外に転じればコンビニ業界の成長余地は大きいと考える。2017年度末でセブンイレブンは米国を中心に、タイ、台湾などで44340店、ファミリーマートは中国、台湾などで6849店、ローソンは中国、フィリピンなどで1596店を出店している。
 
とくに、ローソンは三菱商事から50.2%の出資を受けて子会社になっており、また2018年8月には伊藤忠商事がユニー・ファミリーマートホールディングス(ファミリーマートの100%親会社)のTOB(株式公開買い付け)を終了し、出資比率50.1%で子会社とした。コンビニ各社が次々と商社の傘下に入っているのは、この先の海外本格展開を見据えた動きと言えよう。10年後には「セブンイレブンとローソンがアジアで激突」という文字が新聞の見出しになる可能性は十分にあるだろう。
 
最後にコンビニ業界のキャリア採用の募集職種について触れておこう。コンビニ店舗は基本的にFC店舗である。このため、セブンイレブンやローソン、ファミリーマートに採用された場合、店舗に配属されてレジや商品発注を行うことはない。コンビニでの主な募集職種はスーパーバイザー(SV なおセブンイレブンではOFC オペレーション・フィールド・カウンセラー)、店舗開発、IT(情報システム)、本社(広報IR、経理、財務、人事、海外など)である。
 
とくにコンビニにおいては、SVは重要な職種であり、通常7~8店舗の担当となる。SVはFC店舗のオーナーに対し経営を上向かせるための情報を提供し、コンサルティングを行っている。地域の店舗情報から売れ筋商品の発注をアドバイスしたりもする。コンビニオーナーにとっては、頼りになる存在である。
 
ちなみにローソンのキャリア採用サイトにSVの仕事について説明してあるので紹介したい。
 
—-的確なコンサルティングで、マチの健康ステーションを発展させよう—-
地元に愛され、お客さまに通いつづけていただけるお店をつくる。これがSVの仕事のすべてです。決められたやり方やルーチンワークはありません。加盟店オーナーさんと課題を共有しながら、売り上げ・利益を伸ばす改善アイデアを提供する、とても自由度の高い職種です。まさにフランチャイズビジネスを展開するローソンの大黒柱。そのため、他部署の情報やマチのニーズといったノウハウすべてがSVに集約されます
 
コンビニに入社するとSVとして、若いうちからある程度責任のある仕事を任されることになろう。さらに今後は大手各社が海外展開に一段と注力するとなれば、アジアを中心とした海外人材に対するニーズも増えることが確実と思われる。国内でSVを経験し、その後は海外で活躍するのもいいだろう。