業界を知る 〜流通小売業界・専門店〜

2019.03.07

今回は専門店を取り上げる。

専門店は家具、アパレル、スポーツ用品、眼鏡・コンタクトレンズ、シューズ(靴)など多岐にわたる。2010年頃はイオンやイトーヨーカドーなどGMS(総合スーパー)が伸び悩み、「これからは専門店の時代だ」といった意見も多く聞かれた。それから10年近く経過した現在では、業績が好調な企業もあれはピークを打ったように見える企業もあって一概には捉えづらい。

しかしながら、総じて専門店業界で言えることは、1)海外展開を拡大している会社は業績の伸びが目立つ、2)国内市場はEC(インターネット通販:アマゾンや楽天、ZOZOTOWNなど)との競争が激化している、3)厳しい環境下においても業績拡大が続く専門店もある、などだろう。

本稿では専門店業界のなかから、業績好調な2社(ファーストリテイリング、ニトリ)を取り上げる。

ファーストリテイリングは2018年8月期に国内と海外のユニクロ事業がともに好調で過去最高の業績を達成した。売上高は2兆1,300億円(前期比14.4%増)、営業利益2,362億円(同33.9%増)である。とくに海外ユニクロ事業の伸びが顕著で、今2019年8月期は営業利益に占める海外ユニクロ事業の割合が国内ユニクロ事業を逆転する見通しである。

アジアを中心にユニクロの出店余地は大きく、ユニクロ海外事業は本格的な成長期に入ったばかりといっても過言ではないと考える。今や世界でのユニクロのブランドも確立された感もあって、同社の業績拡大基調はしばらく続くものと予想する。

ユニクロの新卒採用については事実上通年採用を実施しており、3月1日入社と9月1日入社がある。また同社の募集要項を見るとグローバル社員(世界に通用する実力を身につけグローバルで活躍したい人‐全国勤務(海外の可能性あり)と地域正社員(働く仲間とともに地域のお客様に貢献しながら長期的に活躍したい人。特定の地域に勤務)の2パターンの採用がある。

どちらを希望するにせよ、ファーストリテイリングのようなグローバルかつ高成長企業で働くことができれば将来的に自分の財産になると思う。ぜひチャレンジして欲しい。ちなみに同社の採用試験を受けるに当たっての必読書を3冊紹介しておく。ぜひ事前に読んで面接に臨んでいただきたい。

柳井 正(2003)「一勝九敗」新潮社
柳井 正(2009)「成功は一日で捨て去れ」新潮社
柳井 正(2012)「現実を視よ」PHP研究所

家具を中心にインテリア・生活雑貨に展開するニトリホールディングスも好調が続いている。2018年2月期は売上高5,720億円(前期比11.5%増)、営業利益933億円(同8.9%増)となり、創業50周年を31期連続増収増益で飾った。2019年2月期も順調に推移したので、32期連続増収増益を達成したものと思われる。

ニトリの強さは、製品開発に加え、製造、物流、販売まで全て自社で行っているため、コストコントロールが効きやすい点にある。加えて、商品開発力も高く、自社開発の冷感寝具「Nクール」や発熱素材を使った寝具「Nウォーム」の敷きパッドや毛布といった高機能商品が好調である。

私はアナリスト時代に決算説明会で似鳥昭雄社長(当時、現会長)の話を何度も聞いたことがある。話はとても面白く魅力にあふれるものだった。似鳥氏の話を楽しみにしていたアナリストは多かったと思う。同社に入社すれば、名経営者の似鳥さんとお会いして話すチャンスもあるだろう。それだけでもニトリに入社した意味があると考える。

ちなみに似鳥会長は週刊ダイヤモンド(2016年5月21日号、113ページ)のなかで今後は社員との交流にもっと時間を割いていきたいとしている。その記事を以下に紹介する。

—また「企業は人なり」ですから、人材育成のための指導や助言をもっとしていきたい。わが社は他社の4倍くらい社員1人に教育費を掛けていますが、もっと投資してもいい。社員がかわいくて仕方がないんです。数ある会社からわが社に入ってくれた人たちですから、「日本人の暮らしを豊かにする」という私のロマンとビジョンを共有して育っていってほしい—

同社の募集職種は総合職(店舗運営、法人営業、物流、商品企画、広告宣伝、他)である。ぜひ似鳥会長の薫陶を受けて活躍して欲しい。最後にニトリの採用試験を受けるに当たっての必読書を紹介しておきたい。

似鳥昭雄(2015)「運は創るもの」日本経済新聞出版社
2015年4月に日本経済新聞朝刊の「私の履歴書」に連載されたものをまとめた本である。連載当初から読者の大反響を呼んだ似鳥氏の波乱万丈の一代記である。これはもう私が解説するまでもない。ニトリ志望者はもちろん、小売業を志す学生諸君全員に読んでほしい一冊だ。