業界を知る 〜金融業界・銀行(地方銀行)〜

2019.05.07

今回は地方銀行を取り上げる。地方銀行は旧相互銀行、いわゆる第2地銀も含めると全国に104行ある。メガバンクと同じく預貸金利鞘の縮小や有価証券利回りの低下など深刻な運用難により、2018年3月期の地銀合計の当期純利益は9,563億円(前期比0.9%減)となった。
 
足元の状況が厳しいことに加え、地銀の場合は将来的に人口減少による地域経済の縮小という構造的な要因による資金需要の継続的な現象が見込まれている。2018年4月11日公表された金融庁の有識者会議の報告書「地域金融の課題と競争のあり方」には、今後の地方銀行の存続可能性が示された。それによれば、道府県単位で地方銀行2行の存続が可能な地域は宮城、神奈川、愛知、福岡など10府県、1行単独なら存続可能が北海道、京都、愛媛、熊本など13道府県、1行でも存続困難が青森、富山、和歌山、島根、宮崎など23県であった。
 
このため金融庁では、この先地方銀行の再編集約を推し進めていくものとみられる。加えて同庁では地銀に対して、将来に向けた「持続可能な経営モデル」を要求している。これは単なる合併で一息つくのではなく、将来にわたって持続していけるビジネスモデルへの変換を迫っているのである。地方銀行にとっては、残された時間が少なくなってきているという現実がある。
 
このように地方銀行は将来的にも厳しい状況が続くのは間違いない。現在も地銀は再編の過程にあるが、この先5~6年以内にさらなる再編や淘汰が起きるのは確実な情勢と言える。このため、地銀を志望する学生諸君はそれなりの覚悟を持って入社試験に臨む覚悟が必要だろう。
 
しかしながら、将来の再編や淘汰など重々承知で自分の愛着のある地域経済に貢献したいという強い気持ちがある学生、逆風のなかであってこそ自分の実力が発揮できる考える学生、あるいは自分が新しい地銀のビジネスモデルを作り上げると考える学生にとっては逆にチャンスかもしれない。
 
地方銀行の募集職種は本支店業務(営業、窓口、為替など)がメインで、大半の銀行では新卒で入行すればほぼ全員が支店業務となる。支店で3年ほど経過した後は、本人の適性や希望により本社(経営企画、営業企画、人事、広報、法務、コンプライアンスなど)への異動もあるものの、基本的には支店業務が中心となる。ただ地銀もメガバンクと同じように、支店数そのものは減少していくだろう。
 
最後に地方銀行の志望学生にぜひ読んでおいてほしい本や金融庁、日本銀行の調査レポートを紹介しておきたい。
 
「銀行員はどう生きるか」 浪川攻(2018)講談社現代新書
銀行員志望学生には必読の一冊。我が国のメガバンクや地銀の現状を概観し、その後米国の銀行の事例を詳細に紹介し、わが国の銀行もやがて米銀のようになってくだろうと指摘する。さらにフィンテック時代の銀行にも言及してある。大変革の渦中にある銀行業界がとてもよく理解できる。
 
「地域金融の課題と競争のあり方」2018年4月 金融仲介に向けた検討会議
(金融庁HPよりダウンロード可)
金融庁の有識者会議が地方銀行の抱える問題をまとめた報告書である。地方銀行の現状を理解するうえでぜひ一読をお薦めする。
 
「金融システムレポート」2019年4月 日本銀行
(日本銀行HPより全文と概要ダウンロード可)
金融システムレポートは日本銀行が半年に一度、金融システムの安定性を評価するため発表している。直近の2019年4月17日のレポートでは、企業の資金需要が現在と同じペースで減る場合、10年後の2028年度に約6割の地方銀行が最終赤字になるとの試算を示した。