今回は食品業界を取り上げる。食品企業といえば、スーパーやコンビニで私たちが日常的に接していて、きわめて身近な存在だろう。みなさんは食品企業にどういった印象を持たれているだろうか。おそらく、「ドメスティック」「安定企業」といった感じではなかろうか。もちろん、国内市場を中心に事業を展開しており、上記のイメージの食品企業も数多くある。しかし、海外展開で実績を積み上げ、グローバル企業として活躍している企業もある。食品業界では何度かに分けて、私の注目する企業、とくにグローバルに展開する企業をみなさんに紹介したい。最初に紹介する企業はしょうゆで有名なキッコーマンである。
【キッコーマン】
千葉県野田市付近では17世紀中頃から豊富な水を利用して醸造醤油づくりが盛んであった。多くの醸造家が生まれたが、1917年に野田の茂木6家、高梨家、流山の堀切家の8家が合同して「野田醤油株式会社」を設立したのがキッコーマンの始まりである。キッコーマンの茂木友三郎名誉会長、堀切功章社長はともに創業家一族の出身である。同社は老舗ファミリー企業の代表格であり、ファミリービジネス研究者の多くが同社をテーマにしている。「なぜ老舗ファミリー企業のキッコーマンが成長を続けることができたのか」について、色々な説があり、また茂木氏、堀切氏あるいは高梨家当主の高梨一郎氏(NPO法人ファミリービジネスネットワークジャパン理事長)も新聞・雑誌などで同社の経営について語っている。ちなみに、老舗ファミリー企業研究は面白い分野で関連の書籍も多く出ている。関心のある学生諸君はぜひキッコーマンについて調べてみて欲しい。
千葉県野田市付近では17世紀中頃から豊富な水を利用して醸造醤油づくりが盛んであった。多くの醸造家が生まれたが、1917年に野田の茂木6家、高梨家、流山の堀切家の8家が合同して「野田醤油株式会社」を設立したのがキッコーマンの始まりである。キッコーマンの茂木友三郎名誉会長、堀切功章社長はともに創業家一族の出身である。同社は老舗ファミリー企業の代表格であり、ファミリービジネス研究者の多くが同社をテーマにしている。「なぜ老舗ファミリー企業のキッコーマンが成長を続けることができたのか」について、色々な説があり、また茂木氏、堀切氏あるいは高梨家当主の高梨一郎氏(NPO法人ファミリービジネスネットワークジャパン理事長)も新聞・雑誌などで同社の経営について語っている。ちなみに、老舗ファミリー企業研究は面白い分野で関連の書籍も多く出ている。関心のある学生諸君はぜひキッコーマンについて調べてみて欲しい。
さてキッコーマンはグローバル食品企業に成長した。2019年3月期の売上高、営業利益それぞれに占める海外比率は60%、71%である。海外では北米が強いが、欧州やアジア・オセアニアでも一定の存在感を発揮している。「Kikkoman」は今や世界ブランドになっており、少なくとも米国人で「Kikkoman」を知らない人はいないと言ってよい。海外のしょうゆ生産拠点も米国2工場、中国2工場、台湾、シンガポール、オランダにある。日本、そしてキッコーマンのしょうゆが世界で受け入れられたのである。これは単に日本食ブームで伸びたからというだけでは説明がつかない。我が国のしょうゆが世界の料理に調和するということなのだろう。
キッコーマンの海外展開は茂木友三郎名誉会長(社長、会長を歴任、経済同友会副代表幹事、私の母校国際大学の副理事長も務めた)のリーダーシップによるところが大きい。同社の海外展開の歩みについては、「キッコーマンのグローバル経営」(茂木友三郎、生産性出版、2007)をぜひ読んでいただきたい。この本には茂木氏の経営哲学や人材育成の考え方なども書かれている。私は名著だと考えている。キッコーマンを志望する学生は同社にエントリーする前に必ず読んでおくようにしておきたい。
キッコーマンは2020年度(2021年3月期)を最終年度とする中期経営計画が走っている。最終年度の目標は売上高5,000億円(2018年度4,536億円)、営業利益450億円(同384億円)である。十分達成可能な目標であり、また仮に未達であったとしても中期成長トレンドに何の問題もない。北米の安定成長に加え、欧州やアジア・オセアニアで高い収益の伸びが期待できるだろう。
茂木氏は前掲書で、グローバル人材の要件について、(1)職務のスペシャリティを持っていることを前提に外国語を身に付けること、グローバルに活躍しようと思えば若い人は英語に加えてもう1ヵ国語くらいは身に付けるべきだ、(2)異文化への適応性で、アメリカに住めばアメリカの文化に、ヨーロッパに行けばヨーロッパの文化に適応できる人でなくてはならない、と強調する。キッコーマンに入社することができれば、色々な意味でチャンスが多そうである。ハードルは高いと思うが、ぜひチャレンジして欲しい。