就活生へのアドバイス(特別編)

2020.05.16

今回のブログは業界分析ではなく特別編として、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)による企業の採用活動の現状と見通しを考察し、それを踏まえたうえで現在就職活動中のみなさんへアドバイスをお届けしたい。
 
【企業の採用活動の現状と見通し】
例年であれば3月から企業の広報活動が解禁され、6月の選考開始直後から「内定出し」というスケジュールである。しかし新型コロナの影響を受けた2021年春採用については、一部の大企業を除き大幅に停滞しているのが実情であろう。3月から企業の採用担当者そのものが在宅勤務に切り替わったことに加え、大手就職支援サイトが実施する大規模な企業説明会などのイベントなどが軒並み中止に追い込まれ、企業と学生との出会いの場もなくなったからである。選考そのものが進捗していないのだ。
 
5月以降は、オンラインでの企業説明会が増えてはいるものの、私の感触ではざっくり例年より1~2カ月程度、採用スケジュールが後ろ倒しになっている印象を受ける。このため、在宅でのネット環境整備等で就活のスタートに出遅れた学生、企業からの連絡がこなくて心配している学生のみなさんも特段あせる必要はないだろう。私は企業の採用活動が本格化してくるのは恐らく東京や大阪で緊急事態宣言が解除される6月からで夏が山場になるとみている。
 
企業の採用方法についても触れておきたい。従来の対面型の説明会や面接は姿を消し、大半の企業がオンラインでの説明会と採用面接に切り替わった。日立製作所などは最終選考まですべてオンラインで行うと表明している(産経新聞2020年5月2日)。新型コロナの状況にもよるが、通常個人面接は応接室や比較的小規模の会議室で行うケースが多いため感染リスクがある。このため、日立のようにすべてオンラインで「内定出し」まで行う企業が増えることも念頭に入れておきたい。
 
新型コロナの影響により企業の採用計画が白紙に戻るのではないかと心配する向きもあろう。5月15日(金)にピークを迎えた東証1部上場企業の決算をみる限り、今年度の業績見通しは半数以上が「未定」としている。大企業でも先行きが見えないのである。非上場や中堅企業、中小企業はさらに厳しい状況にあると思われる。今のところ採用計画を見直すといった企業についての報道は確認してない(2020年5月16日現在)。不幸中の幸いと言えよう。ただ今後の業績によっては、採用計画見直しの方向に動くかもしれない。とくに新型コロナの影響が大きい小売り(とくに百貨店)や外食、旅客運送(なかでも空運)、観光(旅行、ホテル等)などで新規採用を控えたり、縮小する動きが出てくる可能性はある。このあたりは注意深く見守っていきたい。なお、大手上場企業では今年度よりも、むしろ来年度の採用を抑制する動きが強まるかもしれない。
 
【就活中のみなさんへのアドバイス】
事実上、企業の採用活動が滞ったことやオンラインでの説明会や面接に切り替わったこと、ネット環境の整備などみなさんの多くは精神的に疲れたこととお察しする。大学のキャリアセンターとも直接相談ができず、どうしていいかわからず戸惑われた方も多かったのではないだろうか。以下では、みなさんに私から3つのアドバイスをお送りする。
 
アドバイス(1) オンライン就活に慣れる
企業の採用活動がオンラインにシフトしたため、みなさんはWebでの説明会や面接に慣れる必要がある。対面ではないので、面接官の反応がわからないと不安を覚える方もいるだろう。かくいう私も5月からオンライン授業を行っているが、学生の反応がわからず心配な面もある。企業の面接官もみなさんとのオンライン面接は初めての経験なので同じ気持ちだろう。必要なことはオンライン面接に慣れることである。オンライン面接では画面の映り方(背景や明るさ)、声のトーンなど細かいところで面接官の印象が変わる可能性もある。面接システムの操作もスムーズに行わなくてはなるまい。友人やキャリアセンターの教職員の方々との入念な事前練習をお勧めする。
 
アドバイス(2) 業界研究・企業研究をしっかりやる
オンライン説明会が通常の世界になりつつあることを前提にすれば、どうしてもBtoC(消費者向け)の大企業に学生の関心が集中し、競争が一段と激化することになるだろう。しかし、そこは踏み込んだ業界研究・企業研究を行うことが肝要だ。私がこれまでのブログで繰り返し書いてきたように企業の中期経営計画など将来の方向性をしっかり把握しておくことが特に重要である。またBtoCに限らなくともBtoB(法人向け)業態の企業、知名度がさほどなくても優良な企業は数多くある。もちろん、ベンチャー企業やソーシャルビジネス、NPO法人などといった選択肢もあるだろう。
 
アドバイス(3) コロナ後を見据えた視点に立つ
今回の新型コロナは我が国のみならず、世界の国々に多大な災いをもたらしている。およそ100年前のスペイン風邪の前例をなぞると、完全に終息するまで2~3年かかるという見方もある。在宅ワークやオンライン採用もその一つだが、コロナ前とコロナ後では、パラダイムシフト(社会全体の考え方、価値観が非連続的ないしは劇的に変化すること)が確実に起きる。元の世界には決して戻れない。企業、そしてそこで働く社員も大きく変わらざるを得ないのだ。
 
面接では、この点を踏まえて自分の考えを堂々と熱く語ればいいだろう。例えば、「御社はコロナ後に〇〇〇のように変化していくと思います。私はこういった役割で貢献したい」といった感じである。自分が「変化に対応できる人材」であることを強調すればよい。