ROIC経営(特別編)

2022.09.02

近年は、ROEに加えて、ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)という指標が注目されています。みなさんもこれから各社の統合報告書を読み込んでいけば、CFO(Chief Financial Officer、最高財務責任者)が「ROIC経営に取り組んでいます」と述べている記述を目にすることもあるでしょう。

 

ROICを簡単にいえば、投下資本(有利子負債+自己資本)でいくら稼いだかをみる指標です。

 

 ROICはWACC(Weighted Average Cost of Capital)と呼ばれる資本コスト(企業の資金調達に伴うコスト)と対比されます。すなわち、

 

新たに創出された企業価値=ROIC-WACC

 

となるのです。言い換えますと、ROIC-WACCがプラスであれば企業価値を生みだしている、逆にマイナスであれば企業価値を毀損しているということになります。

 

例えば、複数の事業を抱える企業を想定しましょう。その企業のA事業はROIC-WACCがプラスで新たな企業価値を生みだしている、逆にB事業はマイナスで企業価値を毀損していることは十分にありえます。

 

このような場合、経営者はA事業のさらなる強化を図るとともに、B事業は今後の市場成長性を考慮したうえで、継続するのか、継続するとしたらどのようなテコ入れを行うのか、あるいは他社に売却するのか、といった経営判断をしなくてはなりません。

このように、ROICを経営に導入すれば、最適な事業ポートフォリオ(事業の組み合わせ)の構築や不採算事業の撤退などを円滑におこなうことができるのです。

 

ROIC経営に取り組んでいる企業は、企業価値向上に努力しているといえます。ROIC経営の代表企業といえばオムロンがよく知られています。さらにここ数年では、キリンホールディングスや神戸製鋼所、マクセル、味の素などがROIC重視の経営に舵を切っています。この先も企業規模を問わず、多くの企業がROIC経営を導入することになるでしょう。