出戻りOKの企業について(特別編)

2022.01.16

就職した会社で何年か働いたのちに、自己都合で退職する方も多くいます。その理由は様々で、(1)キャリアアップのための転職や留学、(2)親の介護、出産・育児、(3)配偶者の転勤、などが挙げられます。

 

日本企業の場合、どのような理由であっても、退職すれば二度と戻れないという考え方が一般的でした。ですが、近年は退職者の再雇用制度、いわゆる出戻りを認める企業も増加しています。

 

この背景にあるのは、やはり企業のダイバーシティ(人材の多様化)への積極的な取り組みにあるでしょう。とくに(1)の理由で退社し出戻りを希望する人材は、「自社のことをよく知っていることに加え、他社での勤務や留学などいろいろな経験を積んで視野が広くなっている」と間違いなくいえるからです。

 

出戻り人材を活用して、社内の活性化につなげ、企業価値を向上させようというちゃんとした理由があるのです。この点で、出戻りOKの企業は「度量が大きい」という向きもありますが、これは的外れの意見でしょう。企業の度量云々の話ではありません。

 

具体例を紹介しましょう。明治ホールディングスの食品セグメントの中核子会社明治のケースです。同社は2020年4月1日付採用より、退職後も再就職できる「リ・メイジ制度」を導入しました。2020年1月23日付けのプレスリリースに制度の仕組みや導入の狙いが説明されています。

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広がるダイバーシティへの取り組み 退職後も再就職可能な「リ・メイジ制度」を導入 2020年4月1日付採用より

2020/01/23

 

株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)は、広がるダイバーシティへの取り組みの一環として、当社を退職後も当社への再就職が可能な「リ・メイジ制度」を、2020年4月1日付採用より導入いたします。当社で得たノウハウや知見を有し、退職後に多様な経験や知識を培った退職者の再就職を行うことで、社内のさらなる活性化や、新たな価値創出を目指してまいります。

 

1.制度概要

(1)名称

「リ・メイジ制度」

※「リ・メイジ」という名称には、「リトライ」、「リスタート」等に含まれる「再び」、「繰り返し」という意味の「リ」と「メイジ」を組み合わせることにより、「退職者が再び当社で活躍し、新しい風を吹き込むとともに、当社自体も繰り返し成長していく」という思いを込めております。

 

(2)再就職時のフロー

①再就職希望者が、当社HPにある専用サイトに必要事項を入力

②採用選考を実施

③再就職

 

(3)再就職にあたっての条件

当社にて正規従業員として3年以上勤務した後に退職した者

 

2.導入時期

2020年4月1日付採用より

 

3.その他

当社はこれまでも当制度に近い規程を設けていましたが、再就職にあたっての条件が限定的な内容となっておりました。広がるダイバーシティへの取り組みの一環として、今般新たな制度を導入し、社会の多様なニーズに貢献してまいります。

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いかがですか。明治は企業戦略として「リ・メイジ制度」の導入を決めたことがわかりますよね。明治以外にも、名称の違いはあっても出戻り社員ウエルカムの企業は結構あります。私がざっと調べただけでもニトリや楽天、クラレ、コクヨ、富士通、森永乳業などで再雇用制度がありました。今後は再雇用制度を導入する企業がさらに増えると予想します。

 

読者のみなさんも就活がスタートすれば多くの企業説明会に参加することになります。説明会の終わりごろにQ&Aがあるのですが、その場で「御社には再雇用制度がありますか。もしくは検討されていますか」と採用担当者に質問するといいでしょう。その会社のダイバーシティに対する本気度がわかるからです。

 

DeNAの創業者、南場智子さん(現代表取締役会長)は著書「不格好経営」(2013、日本経済新聞出版社)のなかで、「出戻りは絶対に許さない、という経営者もいる。賛否両論あるのだろう。もちろん個別判断だが、私はおおむね歓迎する。外を見て、視野を広げたうえでまた選んでもらえるならその判断は本物だし、DeNAのよさや課題を客観的に捉えて改革の旗ふりをしてほしい」と書いていました。

 

さすがだと思います。今から10年前は企業経営にダイバーシティという発想がない時代でした。南場さんは、その頃から出戻り人材が貴重な存在であることに気づいておられたのです。私はDeNAの成長要因の一つに、社員の出戻りOK戦略があったのではないかと考えています。